サラリーマンと資本家の違い(三戸政和Vol.3)
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サラリーマンと資本家の違い(三戸政和Vol.3)

ウェルビーイング・ラボ セミナー開催報告

「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい
ー 人生100年時代の個人M&A入門」

講師: 三戸政和(事業投資家)
株式会社日本創生投資 代表取締役社長

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連載初回では、三戸さん自身が会社を買い、新オーナーとして経営するに至る体験を、第二回では個人M&Aが現実に成功できる理由をお伝えしました。

初回冒頭エピソードの詳細が、三戸さんの現代ビジネス(講談社)記事「驚愕…!25歳サラリーマンが、3000万円で「会社を買った」話 それも、自己資金はゼロだって…!」(2018.11.02)で掲載されています。登場する日立製作所出身の溝口勇樹さん(現在25歳)は、4月に出版された三戸さんの本を読み、3ヶ月後には1800万円を個人保証ゼロで調達して、オーナー社長になりました。給与を上げて腕のいい職人を雇うなど、「大企業の手法を持ち込む」という本に書かれた通りの経営で業績を伸ばしているそうです。奇抜なアイデアのようにも思われる個人M&A(企業買収・売却)ですが、現実にこんなことが始まっています。

この溝口さんは、サラリーマンから資本家への転身を果たしたわけです。セミナー内容を編集部が再構成してお届けする連載3回目は、この両者の発想の違いについてお伝えします。

資本家は「所有」で稼ぐ

日本のおカネ持ちはみなオーナー社長です。たとえばソフトバンクの孫正義さんの年収は、役員報酬が1億円ほど、配当収入が100億円ほどです。さらにキャピタルゲイン(株式の含み益)が2兆円です。

サラリーマン社長なら、どんな有名な会社でも収入は基本、役員報酬だけです。ストックオプションなどよっぽど付かない限り何百倍という差がついています。でもソフトバンクと、たとえば日産やサントリーとで、経営することの難しさや責任ってそう違わないですよね?

違いは、株式、つまり会社の所有権を持っているか、だけなんです。それが資本主義の仕組みです。「所有」で稼ぐのが資本家というポジションです。その差は結局、リスクを取ったかどうか、なんです。

ただ、「資本家の発想」なら、サラリーマンであっても持つ事はできます。ストックオプション、成功報酬など、成果に対する報酬を交渉すれば近づくことができます。誰にでもできるはずです。その究極が、株を持つ=オーナーになるということです。

「所有で稼ぐ」3つの視点

では、おカネを入れて所有権を持った後はどうするか? 私は3つの視点が大事だと思っています。

  1. 「おカネとヒト」に働いてもらう
  2. 「バランスシート」で儲ける
  3. 「ポートフォリオ」を組む

資本家は「おカネとヒト」に働いてもらう

単純な例を出しましょう。「売上1億×利益率5%=利益500万円」という事業があり、これが自分ひとりで働く限界だとします。利益を5000万円に増やすには、どうすればいいでしょうか?

1つめは、同じような会社を10社持つことです。これは株主として「人に働いてもらう」ことで可能です。自分が働かなくても会社の所有権を持っていれば利益も自分のものになる。それが「所有と経営の分離」という仕組みです。

もう1つ、「時間を買う」という方法でも実現できます。それがM&Aです。今後10年間で5000万円の利益が見込まれるとすれば、先取りして5000万円で売ることができます。

資本家は「バランスシート」で儲ける

たとえば高級ブランド店が出店すると、周辺の不動産価値も高まります。高級品を買える良い客層の人たちが集まるからですね。
すると高級ブランドの会社は、出店する前に予めその不動産を買っておけば、出店後に土地が値上がって儲かりますよね。もしもお店で利益が出ていなくても会社全体では儲かります。売るまでは含み益だけなので損益計算書の上では儲かっていなくても、資産価値、つまり「バランスシート」上では儲かっています。
こんなのも「所有」によって得られる利益です。

資本家は「ポートフォリオ」で儲ける

儲かっている事業があるうちに、そのキャッシュで次のビジネスを用意するということです。今いくら儲かっていても10年後もそうだとは限りません。でも複数の事業があって、儲かっている事業の方が多ければ、トータルで儲かり続ける仕組みになります。
このように、性質の違う複数事業を組み合わせ、リスクを分散させて儲けるのが「ポートフォリオ」の発想です。

初回でお話した、私がモデルとした先輩経営者は、このスタイルで複数企業の経営に成功していました。私のファンドの経営スタイルでは、経営改善した会社は早めに売却していくものです。

「信用創造」という金融の仕組み

これらを組み合わせて、「おカネに働いてもらう」のが資本家のスタイルです。
たとえば

  • 自己資金100万円
  • 100万円の会社を買う
  • その8割分を担保に銀行から80万円借りて、新たに80万円の会社を買い
  • その8割を担保に64万円の会社を買い
  • さらに8割の51万円の会社を買い


とすれば、合計295万円。自己資金の3倍の資産価値の会社を持つことができます。利益率10%なら、年利益も10万円から30万円に増えます。それが「信用創造」という金融の仕組みです。

ここでは、4つの会社で「ポートフォリオ」を組み、全体の「資産価値」を高め、自己資金の3倍のおカネに働いてもらっています。これが資本家の仕事の仕方です。

中小企業M&Aは賞味期限10年

この中小企業MAビジネスにも、ポートフォリオ発想が必要です。今は稼げる事業ですが、もって10年だと思っているからです。なぜなら、社長の年齢層を考えると、今後10年間が日本の事業継承の大きなヤマになるからです。10年を過ぎたらチャンスは激減するのではないでしょうか。だから今のうちに将来への布石を用意しておく必要があります。

私が本を出したのもその意味が大きいです。今日ここでお話しているのもそうです。できるうちに

三戸
みんなで一緒にやろうぜ!
という流れを作っておきたいのです。

失敗が怖いなら計算しよう

失敗が怖い、という声もよく聞きます。実際それが最大の障壁でしょう。
ここで考えるべきは、投資とは「期待値」の計算であるということです。

たとえば300万円投資して、見込みがざっくり

  • 1000万になる確率:30
  • 300万になる確率: 50
  • 0円になる確率:  20
    くらいの手応えだとする。

    すると、それぞれの期待値は
  • 300万円
  • 150万円 
  • 0円
    で合計450万円。

つまり、300万円を元手に、150%の利回りを期待できる、と計算できます。
投資を怖がる人は、このうち最悪のケースだけを考えてしまうんです。
投資できる人は、全体を考えています。

M&Aに「マイナス」はない

資本主義のルールで大事なことが1つあります。この期待値の計算には「マイナス」のケースはないということです。それが「有限責任」という株式会社の仕組みです。どれだけの損失を出しても、株券の価値がゼロになるだけです。

ツイッター民
売りに出されてる中小企業なんて、隠れた爆弾みたいなのあるんじゃない?

といったコメントもTwitterとかによく来るんですが、仮に巨大な簿外債務が後から発覚したとしても(編集部注: 突然表れた怖い顔の男が「実は御社に借金があります」と借用証書を突きつけるようなケースですね)、株券の価値をゼロにして倒産させればいいんです。株主の個人に支払い義務はありません。

ただ日本の場合は、経営者に個人保証を要求される場合があります。それはしない、と決めればOKです。銀行が個人保証を要求してきたら、断って他の金融機関を探せばいいんです。それも買収前のデューデリジェンス作業(買収前の経営リスク調査)の1つです。1020行と銀行にあたってすべて断られるとしたら、これはヤバいな、と判断できますから。しかも最近は、金融庁も個人保証は外すよう誘導もしています。

だから、最悪でもゼロリセットなんです。ゼロからプラスの方向しか無いんです。

それよりも、日本のサラリーマンの方々が考えた方がいいのは、「何もしないリスク」ではないでしょうか。今日は時間がないので割愛しますが。

(続く)

~編集後記~

この割愛された「サラリーマンが何もしないリスク」について三戸さんは「現代ビジネス」にて、まもなく日本が「サラリーマン絶滅社会」を迎えることに気づいてますか(11/6)と題した刺激的な記事を書かれています。人生100年時代のキャリアデザインの参考に、ぜひお読みください。

第4回は、今お読みのあなたにもできる具体的な個人M&Aの始め方についてお伝えします。11月22日(木)掲載予定。この下のFacebookいいね!、Twitterフォロー、LINEフォローしてお待ちください!

(構成:ウェルビーイング・ラボ編集部)