3人のサラリーマン、ヤバい日本縦断8日間
コト

3人のサラリーマン、ヤバい日本縦断8日間

ウェルビーイング・ラボ セミナー開催報告

35歳からの身体パフォーマンス論
日本一過酷な山岳レース完走者トリプルトークショー

講師:岡田泰三(54)、阿部公一(38)、吉藤剛(35)
2018.10.10 東京・渋谷 株式会社メイクス

・・・

年齢とともに身体性能を高める。

高い目標を掲げ、チャレンジし、実現する。

日本海から、北・中央・南と日本三大アルプスを超えて、太平洋まで、8日間以内に踏破する。

ウェルビーイング・ラボでは、今夏この世界有数の過酷山岳レースを完走した30代〜50代のサラリーマン3名にお話いただきました。

一見、俗世界からかけ離れた「変わったこと」と思われるかもしれません。

しかしそこは、高い目標を抱き、実現した体験者なればこその、人生を豊かにするヒントの宝庫でした。

このセミナー内容を再構成し、連載します。

第一回は、この目標を持ったきっかけ、その過酷さを中心にお伝えします。

きっかけ

— なぜこのレースに出ようと思ったのですか?

阿部公一(あべ・こういち)さん、国際税務コンサルタント、38歳(以下阿部):

この2018年夏の大会に初参加し、完走しました。

私が運動を始めたのは6年前、32歳の時にダイエットのためロードバイクを始めました。それまで特別な運動経験はなく、仕事と勉強のみの生活で、体脂肪率は20%を超えていました。ジョギングは1kmも走れませんでした。

2013年に書籍*でこの列島縦断レースの存在を知り、「なんだこれは!」と衝撃を受けて、いつかこの大会に出てみたいと思いました。それからトレイルランニングを始め、2014年からアルプス縦走を経験し、プロ・トレイルランナー鏑木毅さんのチームにも入りました。そこでお会いした岡田さんが2016年夏にこの大会を完走したのをゴールで間近で見て、次は自分も出たい!と勇気をもらい、準備を重ねました。

*激走! 日本アルプス大縦断 密着、トランスジャパンアルプスレース 富山〜静岡415km』集英社, 2013刊)

岡田泰三(おかだ・たいぞう)さん、航空用ガスタービンエンジニア、54歳(以下岡田):

2016年、2018年と2回完走しました。(※この大会初の50代での2回連続完走者)

私のスポーツ経験は、高校1年だけ陸上部で1500m走をやってたんですが、遅くて女子にも負けるくらいで、嫌になってやめました。大学から30代まではグライダー、39歳から空手を始めて、フルコンタクトのシニア部門で日本一にまでなりました(新極真会「カラテドリームカップ」4549歳男子重量級2011年優勝)。しかしその年に拳を潰してしまい、ようやく骨折が治った1年後にまたやってしまい、医者に「3度目やったら次は骨くっつかないよ」と脅されて、空手をやめました。

その治療期間の2012年ごろ、雑誌ランナーズで、トレイルラン世界王者キリアン・ジョルネ自伝の『RUN or DIE』和訳が連載されていて、自分もやってみたいなと思って、山を走り始めました。2014大会で、知人が参加し、ゴールするのを大浜海岸で間近で見て、本気になりました。翌2015年「分水嶺トレイル」にソロで出場し、完走して、本当に自分が行けると思いました。そして52歳の翌2016年に縦断レースに出場し、初完走しました。

吉藤剛(よしふじ ごう)さん、市役所勤務、35歳(以下吉藤):

私は、中学から社会人まで野球に打ち込んでいたんですが、肩を痛めてやめました。すると体重が80kg近くまで増えて、ダイエットのために2010年頃からランニングを始めました。

はじめ、12㎞も走れば苦しくて続けられないくらいだったんですが、練習して、ハーフマラソンを完走できて、達成感をあじわいました。翌年からトレイルランニングも始めました。もともと山登りをしていたので、トレイルランには自然に入っていった感じです。だんだん距離が延びて、テントを担いで泊まるようにもなり、2015年には「分水嶺トレイルAコース」ソロで優勝しました。

この時に「オレいけるんじゃね?」と思って、2016年の縦断レースに申し込み、出場して18位完走。2018年は6位で完走しました。

幻覚

— みなさん決意から1-2年間で実現されているんですね。

出てみて、どうでしたか? 

阿部: 寝ないで走っていると、意識が朦朧として、幻覚が見えてきます。話には聞いていて、実際に今回、最終日に幻覚が見れて嬉しかったです。(会場笑)

私が見たのは、幻覚としては初級編で(会場笑)

阿部
岩が人に見える!
阿部
落ち葉が猫に見える!
阿部
ガードレールに文字が書いてある!

くらいですね。幻覚だとわかってるんですけど、文字が書いてあると読んでしまうんですね。立ち止まってガードレールを見つめているという危ない人になっていました。(会場笑)

— 幻覚!ヤバくないですか? みなさん見るものなんですか?

岡田: 幻覚は私はこれまで3回くらい見ました。(平然)

始めて見たのは分水嶺トレイルで、仕事も忙しくて前日ほぼ徹夜で準備して、睡眠不足のままスタートしてしまったんです。すると夜間、スポットライトに照らされたように人が立っている。

岡田
なんでこんなところに人がいるんだろう?

と不思議なんですが、見える。後から考えると、道もないから人がいるわけないんですけど。

2016年に縦断レースに出たときは、最終日に来ました。

岡田
丸いものが全部「アンパンマン」に見える。。。

道路標識とか丸いものを見ると、あのほっぺたと目玉まで一緒に見えてくるんです。(会場笑)

あと、南アルプスで○○さん(仮称)が応援に走って来てくれたんですが、彼のスキンヘッドの頭がよっぽど強烈だったのか、球体が全て○○さんに見えました(会場笑)。ここにも○○さん、そこにも○○さん、

岡田
あれ○○さん、なんでここいるんですか?

とおもわず走りながら笑っちゃう。(会場笑)

今回2018年は、なぜか阿部さんと同じで、切り株が黒猫に見えて、文字も見えました。そこらへんの地面とか、壁とかに、わけのわからない文字が見えるんです。

岡田
ボンカレー

とか(会場笑)、お経とか、なんとか株式会社みたいな広告みたいなのとか、見えてしまうんです。

吉藤: 私が幻覚を見たのは2015年の「分水嶺トレイル」の最後のほう、ヤブ漕ぎ区間です。

吉藤
葉っぱが全部人の顔に見える!
吉藤
人が立っている!(近づいたら木だった)
吉藤
遠くに小人がいる!(近づいたら木だった)

アンパンマンも○○さんも見なかったけですけど。(会場笑)

縦断レースでは見たことがないんです。たぶんちゃんと寝てるからですね。

やはり、睡眠不足が極限に達した時に、幻覚が見えるんだと思います。

体脂肪10%喪失

— 他に身体の変化はありますか?

吉藤: 前回2016年レースでは、体重68kg、体脂肪率15%くらいでスタートして、途中あまり食べなかったら、ゴールでは5kgくらい落ちて、体脂肪率も5%くらいになってました。げっそりガリガリにやつれてました。

岡田: 体重は、私はふだん70kg、体脂肪10%くらいです。ただ装備は11つをグラム単位で測って軽量化して臨むわけで、体が重いと意味がなくなってしまうかなと、今回68kgくらいに落としてスタートしました。

それだとレース中に体脂肪がなくなってしまうんです。お腹とか触って「ああもう脂肪ない!」(会場笑)てなってました。こうなるとちょっとの補給ミスですぐにハンガーノックを起こしてしまいます。

次に走ることがあれば、体重変えずに、体脂肪率10%のままで行こうかなと思っています。それでレース中に7%ぐらいまで自然に落ちるかなと。逆に、その体重に耐えられるような脚力、筋力を高めにいくことが必要かなと思います。

吉藤: 私は今回は直前にしっかり食べて、6667kgくらいまで体重を増やしてからスタートしました。レース中もしっかり食べ続けて、ほぼ同じままゴールできました。

普通のレースだとジェルの糖質だけとか、あまり食べずに動き続けるんですが、このレースはしっかりとしたご飯を食べ続ける事が大事です。

阿部: 私も体脂肪率は10%ぐらいです。トルデジアンの時には絞って7%ぐらいでスタートしましたが、そのレースで腸脛靭帯炎を発症してリタイアした経験があります。そこで今回は、体脂肪を低くしすぎない、むしろ意識して食べる、ということをしていました。

(続く)

~編集後記~

幻覚体験率3名中3名、100%!これだけの過酷なレースに、なぜ挑むのか?どのように挑んだのか?
次回から、過酷さの反面の魅力、準備、レース中のマネジメントについてお伝えしていきます。
第2回は11月2日(金)の予定です。