サラリーマンのための個人M&A入門 by 三戸政和

サラリーマンのための個人M&A入門 by 三戸政和

2. 三戸政和の企業買収体験記

<このページのまとめ>

◆ 3000社から1社を選ぶ
◆ 買収後半年間の恐怖
◆「大企業の当たり前」をやってみる
◆「資産を売れば投資回収できる会社」に絞る
◆「実績」がないから形から「信用」を作る

私自身が会社を買うと決めてファンドを設立してからの過程を数字で表すと

  • はじめの声かけ: 3000
  • 初期の検討対象:   200
  • 本格的な検討 :   5
  • 最初の買収  :   1

という量です。

最初の会社は2億円近くで買いました。しばらくは不安で寝汗をかくような思いもしました。でも、失敗したとして、その時に何が起きるのか?と具体的に考えると、実はたいしたことはないんです。半年ほど経営改善を進めるうち、ああ、なんとかなるなあ、と思えるようになりました。

買収先で私が実際やっていること

私が会社を買うと、まず一人で入って、

三戸
明日から何しましょうか?
なんて会話から始めます。
買収先の社員さん
売上が落ちてます。

三戸
じゃあ営業を考えましょうか。
まず営業のリストを作りましょう、電話をかけましょう、PDCA回していきましょう!
決めたことだから、やりましょうね。
というベタな当たり前なことから進めていきます。

私が働いた会社で当たり前にやっていたことを、多くの中小企業でやっていないことが多いのです。

ある会社では、こんなこともありました。

中小企業
地元の人手不足で、外国人実習生に来てもらってたんですが、最近とれなくなって、工場が稼働できません

三戸
とりあえず人材派遣で埋めときましょうか

中小企業
えー!その発想はなかった!

三戸
(えー!その発想なかったんかいな!)

こうして人材派遣で2−30名に来てもらって、工場をきちんと回せるようにするだけで、一気に売上が伸びました。作れば売れる商品だったので、採用が成長のカギだったのです。

あらためて過去の人材募集のやりかたをチェックすると、10年前から人材募集のチラシが全く同じだったんです。せっかく時給上げてるのにそれも書いてない。それじゃあ人来ませんよね。

別のところでも

  • 車検の相見積をとらない
  • 取引先の値引き要請を交渉なく受け入れる

といった事もありました。相見積をとって安いところに注文し、値引き額を抑え、と1つ1つ見直すたびに、その分だけ利益が増えるのです。地方の中小企業には、そんなところがいっぱいあります。

ここまでの収益

買収開始から2年たって、ここまで失敗はしていません。「負けない投資」をしていることが大きいと思っていて、最悪、資産を売り切れば投資額分は回収できそうな案件だけに絞っています。もちろん細かい失敗、反省はたくさんあります。それはやりながら学んでいくしかありません。

ここまで手がけた案件では、全て利回り数十〜数百%の成果が出ています。さらに今後、Exit=売却段階でも利益が見込まれます。

一度このプロセスを経験すれば、実績ができ、自分自身の経験値になり、仲介会社さんにも買収方針などを理解してもらえるので、次も買いやすくもなります。

会社を買うには、まず”信用”を作る

では、なぜ私は「ファンド」(投資事業有限責任組合)という形式を選んだのか? それは一個人にすぎない私が堂々と会社を買うためです。

創業経営者にとって、自ら育てた企業を譲り渡すとは、大変なことです。譲り受けようとする側にはそれ相応の「信用」が必要です。

金融はよく「虚業」だと言われますよね。実際そんな面もあると思います。だから金融業の人は、地価の高い一等地に会社を構えて、ピシっとネクタイ締めて、形から信用を作ってます。見せ方をちゃんとするのは大事なんです。僕らも会社を買うのなら、まず形から用意しましょう。

サラリーマンにすぎない個人なんて、企業買収では相手にしてくれないのでは?
とよく聞かれます。個人でダメなら会社を作ればいいだけの話です。できない理由を探していても何も始まりません。合同会社であれば5万円で作れます。まずは法務局に行ってみればいいんです。

日本のサラリーマンの方は、社長という立場を難しく考えすぎではないでしょうか。
よくあるタイプのサラリーマン
三戸社長! 社長とはすごいですね!
と過剰に謙遜される方もいらっしゃいます。でも、社長なんて、なってみればいいんですよ。

ファンド形式のメリット

ただ買うだけの目的なら通常の事業会社でも構いません。私がファンドという金融業を選んだ理由の1つは、収益性です。

たとえば東京・丸の内の有名ビルは、日本で最高レベルの家賃でしょう。一階のロビーにテナント一覧が出ていますよね。大家さんと関係の深い会社を除けば、ほぼすべて金融関係で占められています。高い家賃を払えるくらい儲かっているわけです。

おカネを出す側の金融業が儲かっているとき、借りる側の事業会社も儲かっているはずです。その両輪を回せれたらベストだなと、ファンドという形式を選びました。経営改善した会社は早めに売却しておカネを回していく方針です。

では実際、個人M&Aが儲かるのか?というと、十分に儲かる仕組みだと思っています。
次ページ3. 個人M&Aが儲かる理由 “で説明しましょう。