サラリーマンのための個人M&A入門 by 三戸政和

サラリーマンのための個人M&A入門 by 三戸政和

3. 個人M&Aが儲かる理由

<このページのまとめ>

◆ 価値ある事業も、承継されねば産業廃棄物
◆ 中小企業の大廃業時代が始まっている
◆ 競合の少ない「ブルーオーシャン」市場
◆ 安く買って高く売る「アービトラージ」もしやすい
◆ 経営改善による「バリューアップ」もしやすい

マトモな会社でも300万円で買える

サラリーマンが300万円で買えるような会社なんて、どうせ無茶苦茶なダメ会社でしょ?

とよく聞かれますが、1つ例を出しましょう。

東京・高田馬場に「六月社」という雑誌図書館があり、20186月に閉館しました。10万冊の雑誌があって、引き取り手がいないと産業廃物となってしまい、廃棄処理に100万円かかるそうです。事業の金銭価値が「マイナス100万円」ということです。こんな会社なら、1円でも引き取って欲しい、ってなりますよね。

つまり、どんなに文化的・社会的に価値のある事業でも、事業をやめた瞬間に価値を失うんです。

この図書館、11冊にはすごい価値のある本が多いんですよ。「アンアン」も創刊号からありますし。たとえば安室奈美恵の引退を報じたスポーツ新聞は1300円でメルカリで取引されてるんですね。こういうのを丁寧に売っていけば結構なおカネになるでしょう。でもその作業をできる人がいなければ、マイナス100万円です。それがもし300万円で売れるなら、売り手にとって実質プラス400万円です。
  (※六月社の蔵書は結局、ある企業が資料として引き取ることになり、廃棄を免れたそうです)

大事なのは、そういう会社が世の中にたくさんある、ということです。とくに田舎で、土地が安くて、しかも上に工場が建っていると、その土地はどうしようもないんです。事業やめた瞬間に価値がゼロになるわけです。売上が年25億あるのに1円で売ります、という案件もありました。こうした資源を活かすことができるのが、中小企業の買収なのです。

中小企業M&Aが儲かる理由

この中小企業M&Aが儲かるのには、理由があります。

1.ブルーオーシャン

中小企業の社長さんは、高度成長期からバブル期にかけては40歳代くらいが多かったのですが、今は高齢化していて、70代、80代の社長さんがたくさんおられます。多くは事業承継に困っていて、その数は100万社以上とされています。それが中小企業の「大廃業時代」です。

これら会社を売り買いするM&A仲介会社はすごい儲かっていて


業績・株価は講演時
東洋経済オンライン「全国トップ500社」最新ランキング(2018)
https://toyokeizai.net/articles/-/202820

と時価総額で数千億円規模、PER(株価収益率)はインターネット企業並みの株価がついています。平均年収が高い会社ランキングでもTOP10のうち4が関連の会社です。

どれも普通の営業会社ですよ。中小企業にひたすら電話して「会社売りませんか」と聞いてリスト作って、「買いませんか」とひたすら電話して、やってることは普通の不動産会社となんら変わりません。それでもこれだけ株式市場から将来性を期待されているし、高い給料も払えています。

また、売買収のノウハウも知られていないので、経験を積んでいけば、どんどん買いやすくなっていきます。

結局、競合が少ないから、それだけで儲かりやすくなります。

2.アービトラージ

安く買って高く売る、ということです。

日本では企業売却が「身売り」と表現されるくらいで、ネガティブに捉える文化が根強いです。「売ります」と言うこと自体のマイナスが大きいし、売れなければたいへんなダメージになります。

だから、会社を売りたいという希望は普通は外に出ません。広く告知すれば高く売れる会社でも、限られた関係者にだけ打診されて、1社でも買ってくれるところがあれば売買成立しやすいのです。

こうして買い取った会社は、少し形を整えてから広く告知して売りに出すだけでも、売買差益が出ます。

3.バリューアップ

さらに、会社自体の価値を上げから売れば、さらに差益が大きくなりますよね。実際、多くの中小企業には改善余地が大きいです。たとえば、

  • 社員からアイデアを引き出して
  • 営業目標をたてて
  • 案件ごと、個人ごとに進捗管理して

といった普通の会社では当然なされていることが、されていないことが多いです。この状態で高齢の社長が引退したら、もう事業は続きません。

たとえば私が社員さんに「アイデアない?」と聞くと、いろんなアイデアが出てきます。引き出したアイデアをホワイトボードに書き出して、整理して、じゃあ「誰が、いつまでに、やってみよう」と進捗管理していきます。これだけで経営がよくなることも多いのです。

やってみて、地方の中小企業に働く方々は、意欲が高いと感じます。都会と比べて、仕事や会社への想いが強い
ようですね。会社や仕事が大好きな社員さんが多いです。

さらに、普通の会社があたりまえにやっていることを実行する、他社の成功事例を移植する、それだけでよくなる中小企業も多いです。たとえば、業務用サーバーのレンタル代が月50万円かかっていて、クラウドサービスに移行すれば月5万、これだけで年間利益500万円以上アップ、なんてことが普通にあります。

起業・開業は難しい

一方で、ゼロから立ち上げる起業は大変です。私が4年前、ロンドンで神戸ビーフを売る事業を立ち上げた際には、想定外のトラブルが続いて1000万円分が溶けました。個人の起業ならこれだけで潰れかねませんよね。

飲食店の開業も危険です。多くの方が「いつかやりたい」と憧れているようですが、実態は競争の厳しい超レッドオーシャン市場です。街の小さなお店は、自宅で家賃をかけずに開いています。専門企業は、資金効率を上げるために利益の出ない料金でランチを出してきます。「コーヒーが好き」「パンにこだわりがある」と趣味の延長でふらっと入っても、続けられるものではありません。

このような「経営者としての行動」のためには、「資本家の発想」を理解しておくべきでしょう。次ページ4. 資本家の稼ぎ方 “で説明しましょう。