
“年収5000万フリーランス”への教科書 by 小倉広
3. Place- コンサルタントの商談哲学
<このページのまとめ>
◆ 価格の次に、商談シーンを考える◆ 下請けになるな、直販しろ
◆ だが売り込むな、高級品であれ
◆ 上から語るな、相手をドラマの主人公にせよ
◆ 与えるべきは、対等感、そして希望だ
高額契約をいただく「商談」という場
繰り返しますが、僕らコンサルタントは「時給」の商売なんです。だから年収を上げたいのなら、必要なのは”Price”=単価を上げる、というたった一つの行動なんです。ここ抜きには何やっても無駄です。それをいかに実現するか、なんです。
そこで次にお話するのが、コトラーの4P理論での”Place”=売り方です。(※Placeとは、一般には、販売ルート・立地・商圏・物流など、流通全般に関するもの)
これ、「最終ゴール」から逆算して考えるアプローチなのがわかりますか? 高い単価をつけたら、次に考えるのは、それで契約してもらうこと、つまり「商談」の方法論です。
あなたは“高級品”です
儲からないコンサルタントは下請け仕事が多いです。たとえばエージェント経由で講演などを受けると、営業手数料を半分くらい、新人なら7割とか取られたりします。お客さんが払う単価が高くても、受け取る実質単価は下がります。
これが力関係なんです。コンサルティングという目に見えない高額商品を売るためには、営業力のある側が強いんです。ただ売上が安定するメリットはあるので、否定はしません。でも年収を上げるには、いかに直販するか、です。同じ仕事をしても、直販できるだけで実質単価が2倍、3倍に上がるから。
そのためには、自分のブランドを作るしかありません。僕の場合は本です。あなた自身がどうするかは自分で考えてください。もうしわけないですが、自分のブランドは自分で作るしかありません。
では、なぜブランドが必要なのか? 単に営業力が高いだけではダメなのでしょうか?
“売り込む”から儲からない
儲からないコンサルタントは「売り込む提案」をしがちです。
僕は営業はしません。呼ばれたら相談に付き合うだけです。
先日も、ある著名な組織の、有識者会議のような会合に呼ばれました。世間で大きく注目されてしまった問題があり、対応を真剣に考えていらっしゃいました。周りには著名な専門家の方々がいて、こんなケースでは普通こうするだろう、という教科書通りの対応方法をみなさん詳しく語っておられました。でも僕はというと、
ここで大事な法則があります。「高級品は売り込んではいけない」のです。
“高級品が欲しい人”の心理
『影響力の武器』という有名なビジネス心理学の本があり、最初のエピソードがおもしろいんです。
売れない宝石店がいよいよ閉店することになって、在庫を全部9割引で放出することにした。値札の0を1つ外すんですが、担当者が間違えて逆に0を1つ増やしてしまった。今まで10万円だった宝石が100万円になったら急に売れだして、完売した。『影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房、2014)
本当かなあ?という話なんですが、大事なのは「高級品を買いたいお客さんは、高い値段のものを買いたい」ということなんです。単価が高いビジネスって要するに高級品ですから、高級品としてパッケージしてほしいし、プライドを充たしてほしい。それがお客さんの期待なんです。なのに売り込まれたら、価値の低いものを押し付けられているようで嫌なんです。
コンサルティングも高級品なんです。ツンツンしろってわけじゃないですよ。僕が若い頃によく言われたのは、高級品を身に着けろということ。スーツ・靴・時計・バッグ・ペンとメモ、全てをスキなく揃えろと。なぜなら僕ら自身が売り物なんだから。今の僕は、その時期は過ぎたと思っていて、今日着ているシャツはユニクロなんですけどね。
“顧客事例”の間違った使い方
こうしてあなたは、高級品としての自分のブランドを創りました。それでも、商談の場は必要です。コンサルタントは実績が大事なので、自分が担当した顧客事例をお話することが多いでしょう。ここにも、儲からないコンサルタントの落とし穴が幾つかあります。
顧客事例の活用は、コンサルティングという目に見えない商品を売るためにとても大事です。でも、
僕がよく使うのは「エピソード」です。例えば組織変革の事例なら、プロジェクト全体というマクロではなくて、ある1時間のミーティングでの1つの場面、1つの発言、とミクロに迫ります。
売れないコンサルタントは、マクロを上から語るんです。
売れるコンサルタントは、ミクロな現場のエピソードを語り、相手の頭の中にドラマを作るんです。
事例の使い方は、もう1つのコツがあります。
売れないコンサルタントは、「成功体験」を語ります。
僕は「失敗」を語ります。そして失敗から這い上がった体験を語ります。
失敗だけのコンサルタントに仕事はきませんが(笑)、そこから這い上がればリアリティが出ます。この構造は、ハリウッドの映画もベストセラー小説も、みんな同じです。はじめから成功していたらドラマにならないですよね。
“専門知識”の間違った使い方
失敗談が有効なのは、もう1つ大事な理由があります。お客さんに劣等感を感じさせないからです。
儲からないコンサルタントは、成功例や難しい話を、ブワーっと上から話します。すると、お客さんの感情がどうなるかわかりますか? 劣等感を感じてしまうんです。
(でもヤな感じ…)
てなります。人は劣等感に長い時間、耐えることができません。そして劣等感を感じさせる人を嫌いになっていきます。コンサルタントも同じで、売り込むために上からいくと嫌われます。
僕の失敗談を1つお話しましょう。僕は20代30代の頃、お客さんからよく言われたのは、
ただコンサルの仕事は、主に役員・部長クラスと一緒にします。すると、彼らが僕をライバル視してきます。敵に回り、ことごとく足をひっぱってきます。劣等感とライバル位意識を感じさせたら、結局は負けるんです。
お客さんに与えるべきは、対等感、そして希望です。一緒にやっていけるんじゃないか?という感覚。それが心に浮かぶような話をしていく必要があります。
さて、こうしてあなたは、高い単価を設定し、自分からは売り込まず、商談の場ではお客さんに希望を与えることができました。でも、自分から売り込まないのに商談って生まれませんよね。
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