“変身し続ける100年キャリア”の設計図 by 田中研之輔

“変身し続ける100年キャリア”の設計図 by 田中研之輔

3. 100年人生に備える大学生活のトリセツ

<このページのまとめ>

◆ 大学受験は「自分一人でがんばる」価値観
◆ 大学に入ったら「社会的資本の価値観」へ切り替える
◆ 学生の社会的資本を育てるのも、学校側の役割
◆ 社会的資本を鍛えるドリルは、身の回りにあふれている
◆ 社会的資本を鍛えた学生は、入社3年後から伸びてゆく

大学では価値観を切り替える

日本の受験は自分一人ががんばる仕組みです。合格者の枠が決まっていて、その中で点数争いをするので、ライバルを押しのけるような形になります。

しかし現実の社会は、一緒に行動して一緒に成功することの方が普通ですよね。そんなタイプの学生のほうが就活がうまくいくし、就職後もうまくいっているようです。

だから大学に入ったら、まず価値観を「受験型」から切り替える必要があります。小中高までに染みついた考え方を4年間でどれだけ自ら壊せるか。

とはいえ、大学のキャリア教育でただ成功者の話を聞いて、浅く真似してみるだけでは、知識重視の詰め込み教育と変わりません。また、大学生は近い人間同士で繋がろうとします。趣味が違う、他の大学、離れた年齢層、海外など、より遠い世界に向かってブリッジをかけていく行動が欲しいですね。

私が大学で教えていること

私が大学教育で行っているのも、「社会的資本を増やすための仕組みづくり」です。多くの大学で今、色々な企業の人にお話いただくことが多いですが、私の法政の講義では、お客さんとして聞くのではなく、運営から担当しています。人選、コンタクト、交渉、当日の運営まで学生に任せます。こうすることで、計画力・協調力・忍耐力といった非認知能力を鍛えます。優しくて話のうまいゲストさんは好評価を得やすいのですが、圧迫系のゲストでストレスを与える経験だって後々効きます。

ゼミは、2年生から4年生まで45人くらいの1つの組織です。どう組織作りをしていくかも学生に任せます。ゼミ生たちは、関係を築き、集団を形成するための試行錯誤を重ねています。

これは学校の外でも、バイトとかインターンシップ先とか、あらゆるところで自分でできることです。全ての機会を「社会的資本を増やすゲームやドリル」ととらえ、チャレンジを積み重ねていけばいいのです。


(小室哲哉さん特別セッション法政大学 2017.7.17)

社会的資本を育てる仕組み作りは大学の責任

とはいえ、リスクを取ることには恐怖もつきまといます。大学教育に必要なのは、そんな不安をカバーする仕組み作りだと思っています。社会的資本の構築を、個人の責任にさせないということです。

例えば講義では、自分の意見を出すことをためらう学生は多いです。そこで二人一組で考えさせると、自分だけの意見ではなくなり、意見を言いやすくなります。この時、発表しない側の学生も、発表する側の背中を後押ししてあげる、という経験をしています。

大学教員
社会的資本は大事です、だから自分で磨きなさい!
では、教育とはいえませんよね。仕組みまでは大学が用意するべきです。

就活、そして入社後の成長のために

学生のうちから多様な人と関わってきた効果は、就活でも評価されます。会社に入ってからはもっと大事になりますね。そして将来的に、変わり続けていく時代に対応し続ける基礎力になるでしょう。私のゼミ生を10年間150人ぐらい。卒業後のキャリアをみていると、大学時代に社会的資本を伸ばした卒業生は 3年後から10年後ぐらいにかけて一気に伸びていきます。

一方で、地道な基礎能力を抜きに、就活で「マニュアルを真似するだけの就活生」になっても、採用のプロからは一目で見抜かれます。私は人気企業の新卒採用担当者ともよく話すのですが、これはよく聞く話です。

そんな私の経験を踏まえ、就活のテクニック的な側面から書いたのが、『先生は教えてくれない就活のトリセツ』です。

これら能力は、子供の頃から育てておくと良いでしょう。中学生・高校生のうちから「社会的資本」を育てる機会を用意してあげる。それが「てこ」になってより大きな「キャリア資本」へと育つのです。

ここまで、親の視点から、学生の学び方、働き方についてお蔦してきました。次ページ4. 100年人生の幸福を自らつかむために “で、わたしたち大人世代の、自分自身の働き方について考えてみましょう。