“変身し続ける100年キャリア”の設計図 by 田中研之輔

“変身し続ける100年キャリア”の設計図 by 田中研之輔

4. 100年人生の幸福を自らつかむために

<このページのまとめ>

◆ キャリアの危機がより身近になってゆく
◆ 予測不能なリスクに、社会的資本によって対応する
◆ 会社・学校が全てでなければ、危機も単なる転換点
◆ リスクを取らないことがリスクになる
◆ 成功の基準も選択肢も、自ら作り出す

社会の変化に対応し続ける

社会的資本は、私たち大人世代にとっても重要です。

たとえばこれからの時代、自分のキャリアや就職先に問題が起きるという場面に、これまでよりはるかに多く遭遇することになるでしょう。そんな時に転職先を探るために、遠い相手とのつながりが活きるのではないでしょうか。逆にいえば「社会的資本への投資をしてこなかったがために詰んでしまう」という事態も起こるでしょう。

メンタルヘルスと社会的資本

現在、大きな社会問題になっているのが、うつ病などのメンタルヘルスです。従来型の単線的キャリアでは、職場でストレスが起きても逃げられないから、このリスクが大きくなってしまいます。

現実に起きてしまったら、専門家に支援を仰ぐべきですが、それ以前の段階で選択肢が不足しているようにも思います。それは

会社だけが全てじゃないじゃん
やめてもいいじゃん
と本人が思えるという選択です。

「1本のレールの上で確実に積み上げていくキャリア」という世界観だと、一度つまずいたらそれで終わりです。でもマルチステージの人生なら、幾つもある転換点の1つに過ぎません。今の仕事をいったんやめて「エクスプローラー」の期間に入ればよいのです。

職場や学校へ行けない期間であっても、社会的資本が増えるような経験を積むことができれば、将来に活かせます。それは無駄な時間ではなく、立派な将来への投資にできるのです。

リスクを取らないというリスク

おカネの世界では、リスクを取りすぎると返せなくなってしまうかもしません。しかしキャリアにおける社会的資本への投資なら、失うものはありませんよね。

むしろ、リスクを取らないことがリスクになると思います。変わり続けなければ、長くなっていく人生を幸せに生き続けることは難しいでしょう。チャレンジせず逃げ切ることは、昔の日本ではできたとしても、これからどんどん難しくなっていくのではないでしょうか。

マルチステージ人生に「勝ち負け」はない

このマルチステージの世界観は、勝ち負けの二択の人生ではありません。いかに選択肢を用意できるか、という複線型の人生です。従来の一本レールの価値観では負けと思えてしまうような場面でも、自ら選択肢を創り出して、自分にとっての成功に転換できるのです。

成功の基準も、自ら作り出すものです。就職先の社名、そこでの評価、昇進などは、自分ではコントロールしきれない「外的要素」です。そこに幸福を依存している限り、「ラットレースに勝ったねずみ」に終わってしまうかもしれません。しかし、自ら作り出した「内的要素」ならば、自分なりの幸福にたどり着くことができます。

こうして自己決定しながらキャリアという資本を積み上げていけば、人生100年時代を幸福に生きることができるでしょう。変化の正体を理解し、できることをやっていきましょう。

< 講師紹介 >

 田中研之輔(たなか けんのすけ)
1976年生まれ。法政大学キャリアデザイン学部教授。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめる。  2008年に帰国。専攻は社会学、ライフキャリア論、社会調査法。 著書に『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(ちくまプリマ新書)、『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(ちくまプリマ新書)、『ルポ 不法移民』(岩波新書)、『覚醒せよ、わが身体。』(ハーベスト社)、『丼家の経営』(法律文化社)、『都市に刻む軌跡』(新曜社)、『走らないトヨタ』(法律文化社)他。 訳書に『ボディ&ソウル』(新曜社)、『ストリートのコード』(ハーベスト社)。著書18冊。  取締役、企業顧問を歴任。大学と企業の<つなぐ>独自企画を多数手がける。

※この記事は、2018年7月開催セミナー「「先生は教えてくれない就活のトリセツ」出版記念講演」(東京・渋谷 株式会社メイクス カンファレンスルーム)の内容を編集部にて再構成してお届けしています。

(構成:ウェルビーイング・ラボ編集部)