妊娠中&出産直後のトライアスロンby 西村知乃

妊娠中&出産直後のトライアスロンby 西村知乃

 

 2018年7月に出産、2019年3月に復帰のNZ大会で世界選手権出場を決めた西村さん。 これまでの連載内容をまとめました。

 今回ついに連載最終回、本格的なトレーニング再開から、そして今後についてお伝えします。

 産後3−4ヶ月頃、JISS(国立スポーツ科学センター)の妊娠期トレーニングサポートプログラムの中で、体幹を使うとか、呼吸とかのやり方とか、地道な身体づくりを重点的に行っていたわけです。始めたばかりの3ヶ月後、続けた後の6ヶ月後と、定期的に画像でチェックしていただきました。

 <産後3ヶ月後>

 上・横から見た時に、身体が前かがみになっているのがよくわかります。赤ちゃんがずっとお腹にいたので、前後のバランスもズレているわけです。

 この状態のまま、身体の負荷を上げていくようなトレーニングを積んでしまってはいけません。一目瞭然ですね。

 <産後6ヶ月後>

 上体をしっかりと起こせるようになりました。

 こうなるまでの過程で、「身体を操作するスイッチレバー」が身体の中にたくさん増えていった感じです。

 こうして動きの質を高めたことが、復帰戦での好成績とも無関係ではないように思います。

時間制約の影響

 この1年ほど、産休・育休を使えたことは、競技復帰に良かったです。法律では「産前休暇」は予定日6週間前から、「産後休暇」は出産後8週間です。以後は勤務先の規定による育児休業が取れるようになります。勤務先の育児休業は幸いなことに長く取れるので、保育園に入れるタイミングも考えて、もう少し延長させていただくことになるかもしれません。

 それでも、産後は時間の制約がとても大きく区なりました。3−4時間ごとに授乳するとか、夜起こされるとか、ママは大変です。そこで、短時間で効率よく練習しないといけなくなりました。

 それまでの練習は、バイクで180 kmをとにかく走りきる、その間に休憩もする、というものでした。今だと、3時間の中で何をするか、「締め切り」を常に意識しています。その結果、短い時間で追い込めるようになりました。バイク練習中も休憩しなくなりました

 週末のロングライドなど、3−4時間になるような練習では、事前に搾乳をしていきます。夜、20時に授乳し、23時頃に翌日用の搾乳をしておきます。

家族の協力体制

 夫も同じチームでトライアスロンをしているので、それぞれのトレーニングは、赤ちゃんをリレーするように交代しながらしています。最初は赤ちゃんを預けて一緒に練習するようなこともありましたが、ぐずるような時に、どちらかが直接見ていたほうが安心だなと、この交代制になりました。

 交代といっても、たとえばランニング用のベビーカーに赤ちゃんを乗せて夫と一緒に練習場所へ行って、どっちかがバイクに乗っている間に、どっちかがベビーカーでランをしたり。

 このランニング用のベビーカーは、海外では多く使われています。1km4分を切る速いペースで走っても全く問題ないくらいしっかりしていますが、その分、幅もあって、狭い歩道などは通れません。道の広い公園専門で走っています。

 

 夫婦で一緒に練習するためには、時間も内容も合わせる必要があり、実は簡単ではありません。この交代制度だと、お互いが限られた時間で練習する、という意識も高まって、今のほうがうまくできています。

 また、夫の実家がクルマで1時間ぐらいのなので、面倒を見に来てくれることも多く、助かっています。ツールド沖縄など遠征でも動向していただきました。

復帰へのスケジュール

 出産翌年でも、今年のコナ(世界選手権)には出たいと思っていました。私が一生の中で真面目に競技を取り込めるのは、1年間の産休を使える今しかないかもしれないからです。

 そうすると、できれば早い時期にコナの権利を取っておきたい。1月以降になると、カテゴリーが30-34歳に変わり、途端にレベルが上ってしまいます。

 できれば11月のマレーシアか12月の西オーストラリアに出ておきたいという気持ちはありました。でも産んでみると毎日忙しくて、早く戻るほど自分を追い詰めることになるな、と分かりました。

 (※実際、3月のニュージランド予選では、女子30−34歳カテゴリに振り分けられた世界選手権出場枠は1つだけ、2位のオーストラリア選手は10時間6分という十分に速いタイムを出しながら出場権を逃しています。その差2分47秒の大激戦! レベルアップした分を上回る実力アップで見事対応した西村さんでした)

レースに向けたトレーニング内容

 産後4ヶ月後、11月11日、「ツールドおきなわ」市民レディース50kmの部に出場しています。夜中に搾乳しておき、朝5時に授乳し、子供と哺乳類を義母に預け、会場へ。私のレースが終わる9時頃に子供を連れて会場に来てもらいました。この頃は日中の授乳間隔が4時間空く時もあり、哺乳瓶で飲まなくてもそれほど待たせずに済む計算でした。 レースは4位に入り、力が戻ってきたな、と感じることができました。

 11月から12月にかけて練習の強度を上げていき、1月にはかなり戻っていました。「産後トレーニングどう」というより、「レース近いんだから練習しなきゃ、練習さえできれば大丈夫だから」という感じです。

 12月から朝スイムも再開しました。週3回、朝5時前に起きて、夫のお弁当を作ってから電車で。帰りは12kmほどを走って帰ります。 バイクは、週2~3回のローラートレーニングと、実走は週1~2回。以前は実走だけで月1000㎞以上乗っていたので、かなり減っており、特に不安が残っていました。 ランは、朝ラン(10km~30km)もしくは朝スイム後の帰宅ラン(12km)を中心に週5回程度。だいたい月 300kmくらい走れました。短いレースに出て、戻ってきたのがわかりました。 練習量も増えていきました。

<12月> 月間81.2h(時間) 週あたり18.3h

  • スイム 15h
  • バイク33.5h(実走642㎞)
  • ラン 23.7h(293㎞)
  • ウエイト 9h

<1月> 95.25h 週あたり21.5h

  • スイム 19h
  • バイク39.25h(実走797km)
  • ラン 29h(342㎞)
  • ウエイト 8h

<2月> 78.35h 週あたり19.6h

  • スイム 13.25h
  • バイク33.25h(実走780㎞)
  • ラン 27.85h(320㎞)
  • ウエイト 4h

 2月に量を少し落として仕上げ、バイクの距離を除けば、かなりいい感じで準備をすることができ、産後のダメージはもうほとんどない、という状態に持っていけました。

 こうして、3月のレースに臨んだわけです。

最後に

 アイアンマンは、出るたびにかなり出費がかさみますし、周りにも迷惑かけてばかりです。周りの協力のおかげで続けられています。それでも挑戦するのは、応援してくれる人がいるからです。

 そして今回、妊娠出産と、アイアンマン226kmへのレース復帰、という珍しい経験をすることになりました。いろいろな専門家の方々の支援もいただきながら実現したことです。この環境には本当に感謝しかありません。

 これから出産を迎える未来のママさんに向けて、こんな私の経験が、こんな人もいるんだと、こんな妊娠生活もあるんだということだけでも、知っていたければと思います。