日本列島縦断レースの8日間 by 3人のサラリーマン完走者

日本列島縦断レースの8日間 by 3人のサラリーマン完走者

3. 出場までの過程

<このページのまとめ>

◆ 契機は人それぞれ、でも共通性があり
◆ 契機① 30歳の体脂肪増加
◆ 契機② 本
◆ 契機③ 知人の完走
◆ やってみれば、目標が固まっていく

日本縦断レースを目指した理由

— ここから、出場までの過程についてお伺いします。なぜこのレースに出ようと思ったのですか?

阿部: 私が運動を始めたのは6年前、32歳の時です。仕事と勉強のみの生活で、体脂肪率は20%を超えていて、痩せるためにロードバイクを始めました。それまで特別な運動経験はなく、当時1kmのジョギングも走れませんでした。

2013年に『激走! 日本アルプス大縦断 密着、トランスジャパンアルプスレース 富山〜静岡415km』(集英社, 2013)というNHKの番組を書籍化した本を読んで、この列島縦断レースの存在を知り、

阿部
なんだこれは!
と衝撃を受けて、いつかこの大会に出てみたいと思いました。トレイルランニングを始めたのはそこからです。

2014年にアルプス縦走を経験し、プロ・トレイルランナー鏑木毅さんのチームにも入りました。岡田泰三さんにお会いしたのもそのチームです。2016年夏の前回大会で岡田さんが出場したので、静岡のゴールへ応援に行き、完走の瞬間を間近で見ました。

阿部
次は自分も出たい!
と勇気をもらい、それから本気で準備を始めました。

岡田: 私のスポーツ経験は、高校1年だけ陸上部で1500m走をやってたんですが、遅くて女子にも負けるくらいで、嫌になってやめました。大学から30代まではグライダーをやってました。

39歳から空手を始めて、真剣に取り組んで、シニア部門日本一になりました(新極真会「カラテドリームカップ」4549歳男子重量級2011年優勝)。しかし優勝した年に拳を潰してしまい、ようやく骨折が治った1年後にまたやってしまい、医者に「3度目やったら次は骨くっつかないよ」と脅されて、空手をやめました。

その治療期間の2012年ごろ、雑誌ランナーズで、トレイルランニング世界王者キリアン・ジョルネ自伝『RUN or DIE』和訳が連載されていて、自分もやってみたいなと思って、山を走り始めました。

2014年のこの大会に知人が参加し、ゴールの瞬間を大浜海岸で間近で見て、本気になりました。阿部さんと同じパターンですね。翌2015年「分水嶺トレイル」大会ソロ部門に出場し、完走できて、本当に自分が行けると思いました。そして翌2016年、52歳で前回大会に出場し、初完走しました。

吉藤: 私は、中学から社会人まで野球に打ち込んでいたんですが、肩を痛めてやめました。すると体重が80kg近くまで増えて、痩せようと2010年頃からランニングを始めました。ここは阿部さんと同じパターンです

はじめ1−2㎞も走れないくらいだったんですが、練習してハーフマラソンを完走できて、達成感をあじわいました。翌年からトレイルランニングも始めました。もともと山登りをしていたので、トレイルランには自然に入っていった感じです。だんだん距離が延びて、テントを担いで泊まるようにもなり、2015年には「分水嶺トレイル」大会ソロ部門(Aコース)で優勝しました。

この時に

吉藤
オレ縦断レースもいけるんじゃね?
と思って、2016年の前回大会に申し込みました。

大会申込までの過程

— 大会出場には、厳しい要件があり、選考会も通過しなければなりません。どのような準備をしてきたのですか?

阿部: 私は2013年に登山やトレイルランニングを始めた頃から、選考の要件を満たすイメージを持って準備してきました。2014年から一人で奥多摩・奥秩父の低い山で泊まりの山歩きを始め、その年には、大会コースの一部であるアルプス縦走にチャレンジしました。以来、大会コースを分割しながら何度も走り、全行程をほぼ4回分走ってきました。山だけでなくロード区間も走りました。北アルプスだけは3回分です。

まわりでは試走する人は少ないみたいだけど、僕は現場に行くのが一番やる気になります。

編集部注:『TJAR2018大会報告書』によると、阿部さんのアルプス縦走トレーニングは、
2014年: コースタイム短縮率80-100%(完走のための標準タイムから、2割速い〜同じタイムで走る)、小屋泊
2015年: コースタイム短縮率70%程度、1泊〜3泊、ドームシェルター(簡易テント)泊
2016年: コースタイム短縮率60%程度、午前2時から午後6時までの行動を複数日連続、ストックシェルター泊
2017年: コースタイム短縮率50%程度、25〜30時間程度のコースを1〜2泊、ストックシェルター泊と、毎年、速さ、距離、難易度を高めながら着実に進歩してきたことがうかがえます。

岡田: 私は特別なことはしていなくて、山にたくさん行く、長く歩き続けることを重視しています。山を始めて1年くらい経った2014年に出たいと思った時、山の経験が不足しているので、まず神奈川山岳連盟の雪山合宿などの講習をうけました。

2015年に本気になった後、夏はコース下見のためアルプスを縦走。これが初めてのアルプスです。1度目は選考会コースの試走、二度目にはミラージュランドから駒ヶ根まで。大浜海岸のゴールまでいくつもりでしたが、時間切れで中央アルプスまで。

選考会に出る要件を満たすために、標高2000m以上でのビバーク(簡易テントなどを使った野営)経験数なども必要なので、コースを外れて穂高岳で1泊して、二百何十kmを行く経験ができました。太平洋まで1週間でいける自信はこの時に付きました。

吉藤: 2015年の分水嶺トレイルに出て本気になった後、試走をかねてアルプスに入りました。ロード区間は車でドライブ。シェルター(簡易テント)で寝る経験も少なかったので、近所の公園にシェルター張って寝たり、雨の日に寝たり、という怪しいこともしていました。

(次ページ 4. 選考会の突破法 “ へ続く)