
日本列島縦断レースの8日間 by 3人のサラリーマン完走者
4. 選考会の突破法
<このページのまとめ>
◆ ゴールイメージを明確に準備する◆ 絶対に間違えようがない状態で試験に挑む
◆ 視界1mの夜霧をコンパスで進めないと遭難するのが山
◆ 受かる人、受からない人、差はひと目でわかる
◆ 準備してきたのは「選考会」か「大浜海岸のゴールゲート」か
— なるほど、三者三様ですが、実地で本番を想定した準備はみなさん積んできたのですね。選考会の当日はどうでしたか?
阿部: 受験当日は、
シェルターを張るとかの実技試験もあるので、事前の準備段階では、
選考会は6月末です。本番と同じ想定をするには、同じ時期、同じ気候、同じ条件でやりたい。何回もやりました。現場に行くと同じような人が何人もいて、ああ、あなたも受けるんですね?! とわかります。この1年前から集まってきているのは意識高い人たちですね。刺激し合えました。
こうして、もう絶対に間違えようがない、という状態で試験に臨みました。当日は準備してきたとおりに実行するだけでした。
岡田: 私は2016年に初めて選考会を通りました。
(*岡田さん吉藤さんは選考会に審査員として参加することで免除される)
私の場合、選考会よりも本戦の方を意識していました。初めて選考会を受けた時は、書類をどう書くかも分からないという状態でしたが、選考会のコースで実際自分がどれくらい歩けるのかはよくわかっていました。
それまで、ある程度天気が悪くても一人で山歩きをしていたので、それで鍛えられたと思います。中央アルプスや南アルプスで、夜にガス(霧)が出て、視界が1mぐらいしか見えない、立っていると足元ぐらいしか見えない中で、コンパスを使って何とか突破する、という経験もしてきました。ミスったら遭難する、ってこういうことなんだなと実感しました。
こんな本戦に近い環境での山歩きを、選考会のコースに限らず普段からしていたから、経験値も上がっていったのだと思います。
— 阿部さんは選考会と同じことを、岡田さんは本番と同じことを、してきたんですね。
岡田: 1週間がかりの本番と同じことをやろうとしても、体力的に限界があるので、できないわけです。そこでコースを分割して、1日目はどこまで、2日目はどこまで、という二泊三日以上のアルプス縦走を何度かしました。
吉藤: 私は2016年の選考会が初めてですが、阿部さんのような緻密な事は一切やっていません。選考会コースの試走はやりましたけど、それよりも、山の幅広い知識を取り入れようと考えていました。
地図読みの試験があるので、地図読みのロゲイニングやオリエンテーリングの大会に出たり、あとシェルターを張って寝る練習を公園でしたり、レスキュー講習会とかで緊急時の対応の仕方を勉強して、選考会に挑みました。
2016年の選考会は暴風雨が激しくて、シェルターを張る時にちょっとペグ(固定杭)が抜けかけて倒壊しかかって、ちょっと失敗したなと思ったのですが、なんとか合格しました。地図読み練習を活かせましたし、緊急時の対応もレスキュー講習会が活かされたと思います。
— 準備の仕方が三者三様ですが、共通するのは、ゴールイメージが明確なんですね。自分なりの目的意識を持って準備をされているなあと思いました。
「選考に出ること」が目標になっている人はひと目でわかる
— 岡田さん、吉藤さんは選考会のスタッフの立場も経験もしていますよね、
岡田: ええ、受かる人、受からない人は、見ればわかるのです。一言でいえば、
選考会は一泊二日なので、日程的には本番の5分の1程度しかありません。余裕をもって平然とできないといけないんです。でも落ちる人は、それだけでアップアップになっています。「選考会に出ること」が目標になってしまっているのではないでしょうか。「大浜海岸フィニッシュまで行く」レベルの準備をしてきた人との差は、ひと目でわかるんです。
逆にいえば、阿部さんのように「落ちる気がしない」というくらい出来る人は実力があるということですね。
阿部: 実際、選考会は余裕ありました。いつもやってきた通りのことをするだけだから、全て自分のペースで進めることができました。他の参加者にも
(次ページ ” 5. 大人の冒険 “ へ続く)